私のこの口、良く言えば「言霊の力が宿る口」、悪く言えば正真正銘の「不吉を呼ぶカラスの口(不吉な予言者)」です。
あまりにも呟いた言葉が現実化してしまうため、数々の出来事が的中するたびに、私はどんどん言葉を慎重に選ぶようになりました。気づけばミュートボタンを押されたかのように、すっかり口数の少ない人間になっていたのです。
誤解しないでください。決して文系青年の物憂げな孤高に目覚めたわけではありません。世界平和(そして私自身の心臓の健康)を守るためのやむを得ない自衛措置なのです。
振り返ればこれまでの人生、私の不吉な予言力はまるで予言のチートツールを組み込んだかのように、百発百中で猛威を振るってきました。
ある時、仲間と登山をしていた日のことです。空は黒い雲が渦巻き、陰鬱な気配が漂っていました。私が何気なく「なんか、すぐ隣に雷が落ちそうな気がする」と呟いたのです。
その言葉が口から出た瞬間、ドォォォン!という轟音とともに、一本の稲妻が目と鼻の先の立ち木を正確無比に直撃。火花が激しく飛び散り、まるで映画の特撮シーンのような光景が目の前に広がりました。
仲間たちは目を丸くして腰を抜かさんばかり。私はといえば、心の中で固く誓いました。「これからは山登りで絶対に口を開くまい」と。
またある時は、海外を一人旅していた時のこと。ゲストハウスの窓枠に肘をつき、退屈まぎれに空を眺めていた際、青空を横切る一機の旅客機が目に留まりました。あの時なぜそんな思考が過ったのか分かりませんが、ふと口をついて出てしまったのです。「あの飛行機、なんだか飛び方が不安定だな。落ちそうな気がする」と。
その場では同宿の仲間から「縁起でもない、神経質すぎるぞ」と笑い飛ばされました。ところが翌朝、ニュース速報のトップを飾ったのは――あの便が本当に墜落事故を起こしたという衝撃の報道でした!
テレビの前に立ち尽くし、手にしたコーヒーカップを取り落としそうになりながら、私は戦慄しました。「おいおい、この口の破壊力、日に日に増してないか……?」
似たようなエピソードを挙げれば、両手両足の指を折っても足りません。私が何気なく「なんか嫌な予感がするな」と口走るたび、現実はあたかも命令を忠実に遂行する従順な僕のように、私の「不吉な予言」をきっちり回収していくのです。
仲間たちの反応も、当初のからかいから半信半疑へ、そして今や私が口を開きかけただけで、全員が一斉に「頼むから黙ってくれ!」という悲痛な懇願の眼差しを向けてくるようになりました。
私だってやりきれません。誰が好き好んで歩く大惨事予告マシンになりたいと思うでしょうか。たまにうっかり「失言」してしまった時は、「神様、お願いだから今度ばかりは外れてくれ」と祈るばかりです。
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