飛行機に乗るたび、客室乗務員がワゴンを押して通路を進み、熱々の機内食を手渡してくれる瞬間を、私はいつも首を長くして楽しみに待っています。窓の外に広がる雲海を眺めながら温かい食事をいただく時間には、他では味わえない特別な旅情があります。

しかし旅系のコミュニティやSNSを眺めていると、「このチキンライスはゴムでできているのか?」「このサラダは1週間放置されたみたいだ」といった過激な機内食批判を頻繁に目にします。理由も分からぬまま「機内食は不味い」と反射的に同調する声も少なくありません。

なぜ機内食はこれほどまでにネット上で罵倒の標的となってしまうのでしょうか?

その最大の要因は、機内食を貶めることが一種の「ネットミーム(ネタ)」として定着し、集団心理に火をつけている点にあります。

機内食が抱える構造的なハンディキャップ

率直に言って、機内食には同情すべき事情がたくさんあります。

上空3万フィートの巡航高度では、気圧が低く湿度は極度に乾燥しています。この環境下では人間の味覚や嗅覚が鈍り、地上と同じ料理でも薄味で妙な味に感じられがちです。

さらに機内食は、衛生管理を徹底した上で事前に調理・急速冷凍され、機内のオーブンで一斉に再加熱されます。レストランの出来立ての料理と比べれば、食感が劣るのは避けられません。

選択肢が限られており、自分の好みに合わないメニューしかないことも失望を呼びます。特に外国の航空会社に乗った場合、現地の伝統的なスパイスや調理法に基づいて設計されているため、保守的な舌を持つ旅行者にとってはカルチャーショックになりやすいのです(インド系航空会社など)。

しかし、地上のコンビニエンスストアで売られているチルド弁当も、数え切れないほどの人々の日常の食事です。絶品とは言えずとも、食べられないほど不味いわけではありません。

実際、品数の豊富さやコスト面で言えば機内食はコンビニ弁当よりずっと凝っていますが、コンビニ弁当をネット上で親の仇のように叩く人はいません。

本当に旅行全体を台無しにするほど悲惨な料理なのでしょうか?決してそうではないはずです。

「機内食叩き」がネットを席巻した本当の理由は、不満をエンターテインメントに昇華させるミーム文化と、「私は今海外へ行くのだ」という承認欲求の表れなのです。

ミーム文化:機内食いじりがトレンドと化す構図

SNSにおいて、ミームは最高のアクセス稼ぎの道具です。質素なアルミ容器の写真を一枚アップし、「今まで食べた中で最も悲哀に満ちたディナー」と誇張して添えるだけで、無数のいいねと共感が集まります。高額なハイテク航空機の中で供される簡素な食事というギャップは、格好のネタになります。

投稿者の多くも、本気で激怒しているわけではありません。単なるウケ狙いか、周囲の注目を集めたいだけなのです。

「肉が硬すぎて窓ガラスを割れそうだ」といった大げさなジョークを言い合い、誰が一番面白い悲惨な写真を投稿できるかを競い合う。機内食いじりは、無害で安全な共通の娯楽として消費されています。

アルゴリズムによる炎上の増幅

SNSのアルゴリズムもこの風潮を後押しします。反響の大きい自虐投稿は優先的に拡散され、さらに多くのユーザーがこの「品評会」に群がります。

誰かの些細な呟きが瞬く間にバイラル化し、XやInstagramで「最悪の機内食」のレッテルが雪だるま式に膨れ上がっていきます。天気の愚痴をこぼすのと同じ感覚で、リスクなく共感を得られる格好のコミュニケーションツールとなっているのです。

雲の上の食事:見落とされがちな小さな喜び

もちろん、誰もが機内食を嫌っているわけではありません。私たちのような一人旅のバックパッカーにとっては、雲の上で食事をいただくこと自体が一つの愛おしい儀式であり、アルミの蓋を剥がす瞬間にはささやかなワクワクがあります。

しかし、「機内食って結構美味しいよね」という素朴な声は、ミームの濁流にかき消されてしまいます。「普通の味だった」と投稿してもバズりませんが、「不味すぎて人生を疑った」と書けば大反響が得られるからです。

次に誰かが機内食を猛烈に叩いているのを見かけても、安易に同調する必要はありません。機内食はミシュランの星付き料理ではありませんが、旅のプロローグを彩る温かな記憶です。

ネットのノイズに惑わされず、窓の外の雲海を眺めながら目の前の一皿を味わってみてください。そこには過酷な空の上で温かい食事を届けようとする、ケータリングの料理人たちのささやかな工夫と温もりが、確かに息づいているはずです。

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